非上場戦略

全ては「顧客へのサービス」と「社員の成長」のため~SCGの「非上場を選択する」戦略~

当社綜合キャリアグループは、これまで『戦略的』に非上場を選択してきた。売上や社員数、あるいは会社の評価価格といった外形的基準では、十分に株式店頭公開が可能な水準に達している。事実、これまで金融機関から上場の打診は幾度も受けている。しかし、当社は上場という選択肢を敢えて選ばずに成長を続けてきた。それはなぜなのか。

上場をゴールとするモデルの是非

多くのベンチャー企業にとって、これまで(あるいは今でも)『上場』(株式店頭公開)は目指すべきゴールとして設定されている。新規技術やサービスなど、ワンアイディアのビジネスがある程度の成功を収めた段階で、よりマーケット占有率の高い大企業へ売却することで資産形成を行う、つまりは会社を換金することで金持ちになるというサクセスストーリー。成功者としてポール・アレンやラリー・ペイジ、ジェフ・ペゾスの名前が挙がるだろうか。しかし、上場をゴールとした起業モデルは、個人のライフプランとしては是であるかも知れないが、顧客サービスの面では正しいとは言えない。その企業が成長できたのは顧客に必要とされたからであり、上場で資金を得たからといって、サービスが変化したりサービスの向上が止まるようであれば、顧客に必要とされなくなってしまう。企業経営とは長期的な継続性、つまり「Going Concern」であるべきだし、上場とは本来、顧客利便性につながる資金獲得の手段でなければならない

上場のメリットとデメリット

上場にはメリットばかりでなく、デメリットも存在する。そのメリット/デメリットの根本は、株式を購入することで誰でもその企業の経営に介入しうるという点である。

上場のメリットとしては、まずは知名度及び信用力の向上が上げられる。
『上場企業』という裏付けは、人材確保や営業力の向上に大きく寄与する。また、市場に経営方針や業績などが開示されることで、経営の健全性が保たれると考えられる。

一方で、上場によるデメリットも無視することは出来ない。
経営に於いてまず重視することが『顧客へのサービス提供』ではなく、『株主利益の優先』になりやすいこと。特に決算期ごと四半期ごとの業績は株価変動に大きな影響を及ぼすため、中長期的視点での投資や開発ではなく短期的な利益を重視しがちとなる。また急激に大きな経営環境の変化が起きる現在においては、利権代表としての株主・役員の判断は遅きに失することも少なくない。

人材マーケットという戦場

当社が主なマーケットとする人材業界は、極めて環境変化が起こりやすいマーケットであり、またマーケット形成からいまだ30年程度といういまだ熟成されていない成長市場でもある。

環境変化の主要因は三つあり、一つは長期トレンドとしての労働人口減少と国内産業構造の変化、二つ目はリーマンショックに代表される突発的な景気動向の変化、三つ目は労働関係法の改正や判例による法制度の変化である。これらの経営環境変化は、ジワジワと地殻変動的に進行するものもあれば、突然発生する類いのものもある。これらの変化に対応するためには、成熟市場における確立された演繹的手法のようなアプローチでは対応が難しい。長期的な顧客サービス提供への明確なビジョンと、果断でスピーディな判断が同時に必要とされる。この環境適応という視点も、当社が非上場戦略を採る理由の一つである。

顧客サービスへの投資、社員の成長への投資

当社の理念の中心にあるフレーズは「日本一利便の良い人材会社」である。これは、どんな経営環境の変化にあっても、顧客から必要とされる人材サービスを提供し続けていくこと、さらに利便の良いサービスを開発していくことを指している。

日本の人材マーケットはこの30年間で次第に流動性を高めてきたが、まだまだ「必要なときに必要な人材を」確保できる状況には至っていない。また、求職者にとってもミスマッチを防ぎ、「働き方に合わせた多様な選択肢」を提供できる状況には至っていない。まだ道半ばである。日本の人材マーケットがより成熟し利便良いサービスを提供出来るようになるためには、さらに顧客サービス開発への投資が必要となる。こういった短期的な利益回収に適さない投資は、上場による株主利益重視と相容れない。

また、当社は社員の成長に資する投資を極めて重視している。
当社が目指す組織は「家族」のように互いを支え利害を共にする集団であり、同時に共通の理念・目標に向かって進む「戦闘集団」である。根幹に据えた結社理念を共有し、社員自らが主体となって顧客利便性を追求していくことで、継続的にスパイラルアップできる会社こそが、長期的にサービスを提供する公器たり得るのである。当社の社名にある「綜」には、「理念を共有した集合体」という意味も込められている。

この集合体には、結社員1人1人の成長が必要不可欠である。そのために当社は、給与・賞与だけではなく、チーム作りや職場づくりへの投資、個人の能力開発や身だしなみへの投資などを継続して行っている。これらの投資も短期的には株主利益を減らすものであり、上場を指向する考え方とは相容れないものである。

  • 総資産当期純利益率(ROA)
  • 自己資本比率